相続税対策にタンス預金を使う人がいますが、本当に大丈夫なのでしょうか。タンス預金は一見税務署にばれなさそうですが、実は様々な方法で発覚するリスクがあります。
「故人が隠し持っていたタンス預金が見つかったけど、このまま黙っていたら脱税になるの?」「もしタンス預金の申告漏れが発覚したら、どんなペナルティがあるの?」など、タンス預金をめぐる疑問や不安を抱えている方は少なくないでしょう。
本記事では、足立区の税理士による監修のもと、タンス預金の定義やメリット・デメリット、脱税のリスクについて詳しく解説していきます。タンス預金に関する正しい知識を身につけることで、思わぬトラブルを未然に防ぐことができるはずです。
タンス預金に頼るのは危険です。適切な相続対策を行い、安心して相続を迎えられるよう、ぜひ本文をご一読ください。
タンス預金とは?その定義と税務上の位置づけを解説
タンス預金の定義
タンス預金とは、金融機関に預けずに自宅などで保管している現金のことを指します。かつては文字通りタンスの中に大金を隠し持つことが多かったため、このような呼び方が定着しました。しかし、最近ではタンスだけでなく金庫や押し入れ、冷蔵庫など様々な場所に隠されているケースが見受けられます。
タンス預金をする理由は人それぞれですが、銀行が倒産した際のリスク回避や、相続の際に納税額を抑えたいという思惑から行われるケースが少なくありません。また、マイナンバー制度の導入によって個人資産の把握が進むことへの警戒心から、タンス預金を選択する人も増えているようです。
ただし、タンス預金には盗難や災害による紛失のリスクがつきまといます。また、親族間で金額や存在を巡ってトラブルになるケースもあるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
タンス預金は課税対象
タンス預金は、課税上は普通預金と同様に扱われます。つまり、利子所得として課税対象となり、利子を得た年の翌年に確定申告が必要です。また、相続財産の一部としてもカウントされるため、相続税の計算にも組み込まれます。
しかし実際には、金融機関を介さないタンス預金の利子を把握することは容易ではありません。そのため、申告が適切に行われていないケースも少なくないのが現状です。
ただし、脱税を目的としてタンス預金を利用することは違法行為に該当します。もし発覚した場合には、追徴課税だけでなく刑事罰が科される可能性もあるため、くれぐれも注意が必要です。節税対策としてタンス預金を検討するのは賢明とは言えないでしょう。
タンス預金は税務署にばれる?調査方法と発覚のリスク
KSKシステムによる財産管理
国税庁では、KSKシステム(国税総合管理システム)と呼ばれる大規模なデータベースを運用しています。ここには、所得税の申告情報や法人税の申告内容、不動産取引など様々な税務情報が蓄積されています。このシステムを活用することで、税務署は個人の資産状況をある程度把握することが可能です。
例えば、被相続人の過去の所得税申告から、相続財産が少ないと判断された場合などは、タンス預金の存在を疑われる可能性があります。KSKシステムは、このように申告内容の整合性をチェックする上で重要な役割を果たしています。
また、金融機関からの報告情報なども、このシステムに集約されます。そのため、大口の現金引き出しや不自然な取引があった場合には、税務署に対して注意喚起がなされる仕組みになっているのです。
税務調査の種類
税務署がタンス預金の存在を疑った場合、実際に調査に乗り出します。税務調査には大きく分けて3つの種類があります。
1つ目は、税務署から文書で質問状が送られてくる「文書照会」です。ここでは被相続人の財産状況や、家族構成など基本的な情報の提出を求められます。回答内容に不審な点があれば、更なる調査が行われることになります。
2つ目は「実地調査」です。これは税務署の職員が直接自宅に赴き、タンスや金庫の中身を確認する調査方法です。相続人に事前連絡をした上で行われますが、調査を拒否することはできません。
最後は「反面調査」と呼ばれる方法です。被相続人の取引先や関係者に対して、金銭の授受などについてヒアリングが行われます。預金通帳など、客観的な証拠に基づいて調査が進められるため、隠し通すのは容易ではありません。これらの調査を総合的に行うことで、税務署はタンス預金の存在を突き止めていくのです。
預貯金口座の取引履歴チェック
税務署には、個人や法人の預貯金口座を調べる権限が与えられています。金融機関に対して照会を行えば、預金者の同意なしに口座情報を入手することが可能なのです。
相続税の調査では、被相続人の口座だけでなく、相続人の口座も対象となります。亡くなる前に不自然な入出金があったり、相続人への多額の送金が確認されたりした場合は、タンス預金への疑いが強まります。
特に、被相続人の口座から100万円を超える出金があった場合は、税務署に対して届出が義務付けられています。出金の用途について合理的な説明ができない場合には、脱税を疑われる可能性が高くなるでしょう。
金融機関は最大10年分の取引履歴を保存しています。そのため、タンス預金をするために何年も前から現金を引き出していたとしても、税務署に発覚するリスクがあることを認識しておく必要があります。
申告漏れが疑われやすい場合
タンス預金が発覚しやすいケースとして、次のようなものが挙げられます。
まず、資産家と言われるような富裕層の相続では、より詳細な調査が行われる傾向にあります。遺産総額が大きいほど、申告漏れによる税収への影響が大きいため、税務署としても看過できないのです。
また、相続税の申告内容に不審な点が多い場合も、タンス預金の存在を疑われやすくなります。例えば、被相続人の収入に対して預貯金残高が極端に少ないケースなどは、注意が必要です。
加えて、親族間の仲が悪く、遺産分割が紛糾しているようなケースでは、タンス預金の存在を内部告発されるリスクもあります。トラブルを避けるためにも、正直に申告することが重要といえるでしょう。
タンス預金の脱税がバレたらどうなる?ペナルティの内容
追徴課税:延滞税と加算税
タンス預金の申告漏れが発覚した場合、まず課されるのが追徴課税です。本来納付すべき税額に加えて、延滞税と加算税が上乗せされることになります。
延滞税とは、納付期限までに税金を納めなかったことに対する利息のようなものです。金額は期間に応じて変動しますが、現在は年率2.7%から9.0%程度とされています。
一方、加算税には、無申告加算税、過少申告加算税、重加算税の3つの種類があります。無申告加算税は、申告義務があるにも関わらず申告しなかった場合に課されます。税額の15%から20%の金額を納める必要があります。
過少申告加算税は、申告はしたものの本来の税額よりも少なく申告した場合に発生します。無申告加算税よりは軽いものの、税額の10%から15%の負担が生じます。
申告漏れの背景に、悪質な隠蔽工作があったと判断された場合には、重加算税が適用されることになります。この場合、通常の加算税よりも大幅に重い負担が課せられます。税額の35%から40%にも及ぶ可能性があるため、十分注意する必要があるでしょう。
重加算税が課される脱税
特に悪質とみなされるのが、脱税を目的としたタンス預金です。税務署に発覚しないことを意図して、多額の現金を隠匿していた場合などがこれに該当します。このような行為は、明確な違法行為と捉えられることが一般的です。単なる申告漏れとは異なり、脱税行為には重加算税が課されることになっているのです。
重加算税は先述の通り、無申告の場合で40%、過少申告の場合で35%と、非常に高い税率が設定されています。例えば、1億円の脱税に対しては、4,000万円もの重加算税が課される計算になります。
一般的な申告漏れであっても、ペナルティは軽くありません。しかし、脱税目的であると判断されてしまうと、さらに重い負担を強いられることになるのです。タンス預金を脱税に利用することは、絶対に避けるべきだと言えるでしょう。
懲役刑や罰金刑の可能性
タンス預金による脱税が発覚した場合、追徴課税だけでなく刑事罰が科される可能性もあります。所得税法や相続税法では、脱税に対する厳しい罰則規定が設けられているためです。
例えば、偽りの申告によって所得税を免れた場合、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科されることがあります。脱税額が1,000万円を超える場合は、その金額を上限として罰金刑が加重されることになっています。
一方、正当な理由なく確定申告をしなかった場合でも、1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が適用される可能性があります。タンス預金の脱税に対しても、同様の罰則が科される危険性が高いと言えます。
実際に、脱税の罪で実刑判決を受けるケースも少なくありません。もちろん、情状酌量の余地はありますが、悪質な脱税には厳正な処分が下されることを覚悟しなければならないでしょう。
多額の追徴課税を受けた実例
タンス預金の脱税によって、多額の追徴課税を受けた例は数多くあります。
大阪の会社役員が、父親から相続した約5億円の現金を申告せず、約2億3,000万円の相続税を免れたケースでは、重加算税を含めて約3億2,000万円の追徴課税が課されています。「せっかく父が残してくれた財産を、少しくらい隠してもバレないだろう」という安易な考えが、高額な代償を招いた形です。
また、東京の不動産賃貸業を営む男性は、約1億8,400万円の申告漏れによって、約4,600万円の相続税をごまかしました。しかし税務調査でこれが発覚し、重加算税を含む約6,200万円の追徴課税を受けることになってしまいました。
このように、一時的に納税を免れたとしても、結局はより大きな負担を背負うことになるのがタンス預金の脱税です。適正に申告し、納税することが賢明な選択だと言えるでしょう。
タンス預金にはどんなメリット・デメリットがある?
すぐに現金を引き出せる
タンス預金の最大のメリットは、必要な時にすぐに現金を引き出せることでしょう。銀行預金の場合、相続発生後は一時的に口座が凍結され、解約手続きが完了するまで引き出しができなくなります。
しかし、葬儀費用など、相続直後にまとまった現金が必要になるケースは少なくありません。こうした場合、タンス預金があれば資金繰りに困ることはないでしょう。
また、災害時など、金融機関のサービスが止まってしまった際にも、タンス預金は心強い存在となります。
預金封鎖などの金融危機に備えて、ある程度の現金を手元に置いておくのは理に適っているとも言えます。
ただし、タンス預金のメリットを過度に意識するあまり、脱税に手を染めてしまっては本末転倒です。くれぐれも節度を持って、適切な範囲でタンス預金を活用することが肝要でしょう。
銀行倒産のリスク回避
タンス預金のもう一つの大きなメリットが、銀行の倒産リスクを回避できることです。
預金保険制度により、銀行であっても口座あたり元本1,000万円までは保護されることになっています。しかし、それ以上の預金は万が一の際に全額が保証される訳ではありません。
一方、タンス預金であれば、銀行の経営状態に左右されることなく、預けた金額がそのまま手元に残ります。金融機関の信用不安が高まった際などは、銀行預金よりもタンス預金の方が安心と言えるかもしれません。
ただし、銀行は預金者保護に向けて健全経営を求められており、倒産のリスクは決して高くはありません。過剰にタンス預金に偏重することは、かえってトラブルを招く恐れがあるため、バランスが重要だと言えるでしょう。
盗難や災害での紛失リスク
タンス預金の大きなデメリットの1つが、盗難や災害による紛失のリスクです。
自宅で多額の現金を保管している場合、空き巣被害などに遭う危険性は否定できません。防犯対策を講じたとしても、プロの犯行を完全に防ぐのは難しいのが実情です。
また、火災や自然災害によって、大切な現金が失われてしまうケースも考えられます。硬貨であれば熱で溶けてしまう恐れもあるでしょう。紙幣の場合も、水に浸かってしまえば使い物にならなくなってしまいます。
一方、銀行に預けておけば、こうした物理的な危険から資産を守ることができます。万が一の火災や水害に対しても、銀行側の保険で補償される可能性が高いと言えるでしょう。
資産防衛の観点からは、自宅に大量の現金を置くことはあまり得策とは言えません。貴重品は金庫に保管するなど、慎重な対応が求められると言えるでしょう。
相続トラブルの可能性
タンス預金をめぐっては、相続時のトラブルが発生することも少なくありません。
被相続人が隠し持っていたタンス預金の存在が、相続発生後に突如明らかになるケースでは、相続人の間で深刻な対立が生じる恐れがあります。特に、誰がどれだけ相続するのかをめぐって、遺産分割協議が紛糾することも珍しくないのです。
また、被相続人の意向が不明確な場合、一部の相続人がタンス預金を着服してしまう危険性もあります。通帳などの記録が残らないタンス預金は、不正に持ち出されても立証が難しいのが実情と言えます。
加えて、申告漏れが発覚した際、本来納めるべき税金を誰が負担するのかでも、争いが生じかねません。脱税の意図がなかったとしても、追徴課税や延滞税は免れられないためです。
こうしたトラブルを防ぐためにも、生前のうちから資産状況を家族で共有しておくことが大切だと言えます。タンス預金の存在を明らかにしておけば、無用な疑念が生まれることもないでしょう。
タンス預金を脱税に使わないために知っておきたいこと
適正な申告と納税が重要
タンス預金を脱税に利用しないためには、何よりも適正な申告と納税が重要です。法律で定められた税金は、国民の義務として誠実に納める必要があります。
確定申告の際には、預貯金だけでなく、タンス預金の額も正直に申告するよう心がけましょう。仮に脱税の意図がなかったとしても、申告漏れがあれば税務署から指摘を受けることになります。
無申告や過少申告に対するペナルティは重く、追徴課税だけでなく刑事罰が科される危険性もあります。適正申告を行うことで、こうした不利益を避けることができるのです。
申告納税が面倒に感じることもあるかもしれません。しかし、税金は社会を支える重要な財源であり、一人一人が責任を持って担う必要があります。面倒くさがらずに、自らの責務をしっかりと果たすことが求められるでしょう。
節税対策としては限界がある
タンス預金は、節税対策としてはあまり有効とは言えません。
確かに、利子所得に対する課税は免れることができるでしょう。しかし、現在の超低金利の環境下では、利子収入は僅かなものにとどまります。わざわざリスクを冒してまで、タンス預金に偏重する意味は乏しいと言わざるを得ません。
また、相続税の節税を目的としてタンス預金を活用することも、あまり賢明ではありません。先述の通り、税務署の調査能力は高く、高額の申告漏れは容易に発覚してしまいます。
むしろ、生前贈与など、適法な相続対策を検討する方が建設的だと言えるでしょう。税制優遇措置を上手に活用すれば、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
タンス預金に頼るのではなく、専門家のアドバイスを仰ぎながら、適切な節税対策を講じていくことが肝要だと言えるでしょう。
専門家に相談して資産管理
適正な資産管理のためには、専門家に相談することが何より大切だと言えます。
弁護士や税理士、ファイナンシャルプランナーなど、資産運用の専門家は数多く存在します。こうした専門家に相談することで、自分に合った資産管理の方法を見出すことができるでしょう。
特に相続対策に関しては、早めの専門家相談がポイントとなります。生前から綿密な準備を進めておけば、相続が発生した際にスムーズな手続きが可能になります。
また、申告漏れの調査対応なども、専門家に任せた方が得策と言えます。税務調査では、高度な専門知識が求められるためです。素人判断で対応してしまうと、かえって不利な状況に陥ってしまう恐れがあります。
信頼できる専門家を見つけ、適切なアドバイスを仰ぐことが、トラブルを未然に防ぐ上で欠かせない取り組みだと言えるでしょう。
タンス預金を脱税に利用しないためのまとめ
足立区の税理士の解説のもと、タンス預金について詳しく見てきました。タンス預金は、災害時の備えとしては意味がありますが、脱税を目的とした利用は絶対に避けるべきです。
税務署の調査能力は高く、預金口座の不自然な入出金や、申告内容の不備などから、容易にタンス預金の存在を把握されてしまいます。もし発覚した場合、重加算税などの追徴課税や、場合によっては懲役刑などの刑事罰を受ける危険性もあるのです。
適正な申告と納税こそが、将来のトラブルを防ぐ最善の方法だと言えるでしょう。税理士など専門家に相談しながら、適切な資産管理を心がけることが何より大切です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| タンス預金の定義 | 自宅などで保管している現金のこと |
| 税務上の位置づけ | 普通預金と同様に課税対象 |
| 税務調査のリスク | 様々な方法で発覚する可能性大 |
| ペナルティ | 追徴課税や刑事罰の危険性 |
| メリット | 災害時に現金を引き出せる |
| デメリット | 盗難や紛失のリスク、相続トラブルの可能性 |
| 対策 | 適正な申告と納税、専門家への相談 |